学校にビオトープを作る目的は、自然環境の学習、コミュニティスペース作り、校庭の美化等、いろいろあるようですが、一般的には「自然の美しさや生態系の尊さを学ぶ情操教育の場」として利用されているケースが多いようです。
これまでこのサイトでは、「ガーデニング分野でのビオトープにおいてはどんな植物を植えるか、どんな魚を入れるかは作る人の自由」と紹介してきましたが、教育目的のビオトープとなると少し意味合いが違ってきます。子供たちの安全確保が最優先である学校や幼稚園におけるビオトープ作りの基本は、人間ファーストのガーデニング分野ということになりますが、 学校では日本古来の自然環境を学ぶことになりますので、その場合は植物、魚、デザインに至るまで、日本に在来するものに限定されます。
それでは学校における理想的なビオトープ作りとはどのようなものなのでしょうか?よくある学校ビオトープ作りのパターンを大きく三つに分けて説明します。
①児童参加型
児童が主体となり、教員が指導しながら施工(穴掘り、防水、植栽)を全て行う。
②専門家にお任せ型
ビオトープの施工は専門家が行い、完成後の維持管理は児童が行う。
③専門家と学校の連携型
専門家指導の下、学校の教員、PTA、父兄が連携して施工を行い、維持管理は児童が行う。
このように比べて見ると、①児童参加型が一番望ましいように思えるのですが、残念ながらこのパターンで上手くいったケースを見たことがありません。なぜなら、児童参加型では単に穴を掘って水を貯めた、という簡易な作り方しかでないからです。ビオトープ先進国ドイツとの違いのページで説明したとおり、ドイツと日本では風土が異なりますのでこのような作り方をしてもうまくいきません。
日本でビオトープ作る場合には防水と水質浄化の技術が必須となるのですが、この重要な部分を念頭に置かずに子供達にビオトープを作らせた結果、上手くいかずに仕方なく撤去したという話を良く聞きますが、これでは本末転倒、お金と時間を無駄にし、子供達に悲しい思いをさせるだけです。専門家から言わせていただければ、ビオトープ作りには専門家にしか分からないノウハウがありますので、子供達だけでビオトープを作らせることは不可能です。
お勧めなのは、②専門家にお任せ型③専門家と学校の連携型のどちらかです。防水や水質浄化等の重要な構造部分の施工は専門家と学校が担当し、草花の植栽、魚の放流、ビオトープの管理等は児童が担当する、という具合に、専門家や大人にしかできないこと、子供にもできることを良く理解したうえで、それぞれの役割を明確に分担することです。これが学校ビオトープ作りを成功させるためのポイントなのです。
ここである小学校でのビオトープ作り成功事例をご紹介します。
この小学校には元々ビオトープがあったのですが、10年以上前に作られたもののようで、現在は防水シートに穴が空き水も貯まらず、木製の橋は朽ち果て、なんとも無残な姿となっていました。そこで子供たちのためになんとか再生できないかということで、PTAの皆様が主体となって再生計画を考えました。