東日本大震災の後、震源地から遠く離れた東京近郊において「コンクリート製の池がヒビ割れした。水漏れしたので作り直したい」という相談が何件かよせられました。ビオトープの防水材料には、高い性能(非吸水性・高強度・高耐久性)が求められます。水が漏らないように吸水しないことは当然ですが、地面は常に動いていますので、これに耐えられるだけの強度と耐久性がなければすぐにヒビが入り水漏れしてしまうのです。  

モルタルやコンクリートで作ったビオトープは耐久性があり水が漏らない、と思われている人が多いようですが、ビオトープ作りの材料としてはお勧めできません。

なぜなら、これらの材料には以下の特性があるからです。

①柔軟性が全くない(地震など地面の動きに追従できずにひび割れする)

②収縮する(長期的に少しずつ収縮してひび割れする)

③強アルカリ性である(ph12~13の強アルカリ成分を溶出して魚や水生植物にダメージを与える)

④吸水性が高い(目には見えない小さな穴がある多孔質である)

「だけど温浴施設の浴槽はコンクリートで作られているじゃないか」という人がいますが、これらの内部にはゴムやアスファルト系の強力な防水材が入っており、その上に鉄筋で頑丈に補強された分厚いコンクリートで作られています。更にその表面にはタイルを張り、アルカリ成分が溶出しないように仕上げています。タイルの目地はひび割れすることもありますが、定期的にメンテナンスして補修されています。このように厳重な作り方とメンテナンスをしているからこそ水漏れすることもなく、アルカリの溶出もないのです。ビオトープもこのような方法で作るのであれば問題ないのかもしれませんが、莫大なコストがかかってしまい現実的ではありません。コストを下げるために、鉄筋も入れずにただモルタルを塗り付けただけという作り方ではすぐにひび割れし水漏れしてしまいます。

一般の人にはコンクリート、モルタル、セメントの違いが分からないかもしれませんので簡単に説明しますと、セメントは灰色でサラサラした粉体。モルタルはセメント+砂、コンクリートはセメント+砂+石、という配合に水を混ぜて固めたものです。一般的に造園業者等が現場で練りコテで塗っているのは「モルタル」です。これらは強アルカリ性(PH14)の素材ですので、水中にアルカリ成分が極力溶出しないように注意しなければなりません。

ひび割れ

         地面に直接塗ったコンクリートのひび割れ

「モルタルはただ水を加えて練ればガチガチに固まる頑丈で安全な材料だ」という認識は間違いです。少し専門的な話になりますが、モルタルの品質を決めるのに最も重要なのは、練り水の比率(W/C%)なのです。練り水は少ないほど硬化後のモルタルは緻密となり強度・耐久性・防水性がともに高まります。同時にアルカリの溶出も最小限にとどめられます。逆に、練り水が多くなるほどモルタルは多孔質になり強度・耐久性は低下し、防水性も失われていきます。(練り方によっては軽く叩いただけで割れてしまうモルタルができることもあります)アルカリを溶出しやすくなるため水質も悪化します。

 仮にモルタルを使用するのであれば、練り水比(W/C)を30%以下に抑えなければ長期的な耐久性や防水性、低アルカリ性は期待できません。しかしこのようなモルタルは、管理された専門の工場で原料を厳重に計量し、減水剤という特殊な薬剤を混合しなければ練り上げることができません。職人さんらしき人がハカリも使用せず適当に水を混ぜているのを見かけますが、このようなモルタルでは強度や耐久性も乏しいので地面の動きに耐えられず、ほとんどヒビ割れしてしまいます。当然のことながら防水性は期待できません。

これまで説明した内容は造園技術とは異なる専門知識ですので、一般的な職人さんは知識がなくても仕方ないのですが、困ったことにホームセンターで売られている「防水モルタル」という材料を買ってきて、「これを使えば大丈夫」と言って施工してしまう職人さんがいるようです。この「防水モルタル」とは普通のモルタルに樹脂などを配合して防水性を高めた材料なのですが、雨水に晒される屋上やベランダの床を簡易的に防水するための材料であり、永久的な防水を保証できるものではありません。普通のモルタルのように柔軟性はありませんので、ヒビ割れすればすぐに水漏れしてしまいます。地面の動きに影響を受けながらも常に水を貯め、魚や水生植物を生息させるというビオトープに適した材料ではないのです。

以上のように、モルタルは一般の人が思っている以上に取扱いが繊細で、物性を安定させるのが難しい材料なのです。モルタル製のビオトープは失敗してしまうと撤去することが非常に困難です。施工には高度な技術と専門知識が必要とされますので、一般の方がDIYすることはおすすめできません。信頼できる業者に依頼し、専門知識を持っているか、ひび割れしないよう補強材(鉄筋等)やクラック防止メッシュがしっかりと入れられているか、十分な厚みが確保されているか、アルカリ成分が溶出しないよう高品質な配合のモルタルを使用しているか等を良く確認することをおすすめします。

ビオトープの正しい作り方

ビオトープを作る前に必ず読んでいただきたい大切な情報。作り方の注意点やポイント、トラブル例、Q&A等、ビオトープ作りで失敗しないために役立つ情報をご紹介します。

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