ビオトープ(庭池・滝・小川)ガーデンの作り方にはいろいろなノウハウや注意点があり、作り方を間違えるとトラブル続きというケースもあります。ビオトープ作り専門のアクアフォレストがこれまでに培ったビオトープガーデンの作り方、庭、ベランダ、屋上に作る際の注意点、水漏れ、アオコ、アオミドロ、メダカの飼育方法、Q&A、トラブル例等のお役立ち情報をご紹介します。

<目次>

1.ビオトープを作るその前に(これだけは知っておきたい注意点)

 ・ビオトープの意味

 ・「自然環境保護」と「ガーデニング」でのビオトープの違い

 ・ビオトープ先進国ドイツとの違い

 ・ビオトープ作りの注意点とポイント

 ・正しい情報の見分け方

 ・学校ビオトープを成功させるためのポイント

 ・在来種と外来種について

2.ビオトープ作りでやってはいけない三原則

 ・土(荒木田)を入れる

 ・溜池状態にする

 ・メンテナンスをしない 

3.失敗しないビオトープの法則      

4.ビオトープの防水方法

 ・防水シートや遮水シートを使用する方法

 ・コンクリートやモルタルを使用する方法

 ・成型池を使用する方法

5.アオコの“毒性”について

6.アオミドロについて

7.ボウフラについて

8. 良い藻・悪い藻の見分け方

9.メダカの飼い方について

10.水生植物の生態と育成条件について 

11.最適な水深について

12.ベランダ・屋上での注意点

 ・積載荷重

 ・防水

 ・防根

 ・潅水

 ・軽量土壌 

13.ビオトープの作り方失敗例  

 ・水漏れ

 ・アオコとアオミドロの大発生

 ・カラスの大群襲来

 ・不自然なデザイン 

14.Q&A  

 ・水が緑色に濁る 
 ・きれいな井戸水を使用しているのにアオコが発生した
 ・ボウフラが湧いてしまった
 ・カラスが集まるようになってしまった
 ・メダカが大繁殖してしまった
 ・いつのまにかメガカがいなくなってしまった
 ・水漏れしてしまった
 ・水漏れしてないのに少しずつ水が減る

15.助成金情報

 

 ・東京都

 ・神奈川県

 ・埼玉県

 ・千葉県

16.お役立ち情報と雑学

 ・庭池と家相について  

 ・池と沼と湖の違いについて

 ・せせらぎのビオトープにやって来た小さな生物たち

 ・便利グッズの紹介 

 ・良い業者の見分け方

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※当サイトにおける「ビオトープ」とは、ガーデニング用語で一般的に意味する自然風の水辺(庭池・滝・小川等)を総称するもので、自然環境保護を目的とするものではありません。  

ビオトープを作る前にまず行っていただきたい事、それはビオトープの意味を正しく理解することです。近年「ビオトープ」という言葉の意味は多様化し、いろいろな情報がありますので、何を参考にしてビオトープを作れば良いのか判らないという方も多いと思います。

ビオトープとは本来、生命(バイオbio)と場所(トポスtopos)の合成語で「生物の生息空間」という意味です。(ビオトープというと水辺をイメージしますが、必ずしも水辺がなくても良いのです)元々は環境保全や野生生物保護に取り組んでいる専門家が使っていた言葉だそうですが、現在はその意味が多様化されておりはっきりとした定義はなされていません。

当サイトでご紹介するようなガーデニング分野では、池・滝・小川など「自然風の水辺」のことを総称してビオトープ、又はビオトープガーデン等と呼んでおり、庭、屋上緑化、ベランダ、アトリウム等、多くのガーデニングシーンで一般的に親しまれているものです。

参考:Yahoo!キーワード検索:ビオトープ 

    Googleキーワード検索:ビオトープ

     Yahoo!画像検索:ビオトープ  

       YouTube:ビオトープ 

後に詳しく説明しますが、ビオトープには大別して「自然環境保護」の分野で用いられる意味と、「ガーデニング」の分野で使われる意味がありますので、これらを混同してしまわないように注意してください。

<ビオトープの正しい作り方>目次

インターネットでビオトープの定義を検索すると「ビオトープとは生物の住息環境を意味する生物学の用語で・・・」という様な難しい説明がでてきます。参考:ビオトープの定義(Wikipedia)

このような学術的な定義は公共事業等で行われる自然環境の復元や生態系の保護を目的としたビオトープ作りの時に用いられます。これら自然環境保護分野のビオトープでは、むやみに穴を掘って水を溜めたり、外来種の植物を植えてしまったりすると、環境破壊につながる恐れもあるため作り方は厳密に定められており、ビオトープ管理士※など専門家による高度な知識や技術を必要とします。維持管理も難しいので一般の人がガーデニング感覚で庭やベランダに作れるものではありません。                            

「自然環境保護」分野での様々なビオトープ

ビオトープ 森
ビオトープ 滝
ビオトープ 

一方、ガーデニング分野のビオトープは、庭やベランダなどのプライベートな人工環境において、水のせせらぎやそこに集まる生物などを見て楽しみ癒される、といった観賞目的として作りますので、自然環境保護を目的としたビオトープの定義にはあてはまりません。ところが困ったことに「ビオトープなのだから魚は〇〇、植物は〇〇を入れなければいけない、防水は簡易的で大丈夫、濾過システムや水の循環はビオトープ本来の意義に反する、手入れをせず自然のままが一番良い」と、自然環境保護分野のビオトープの定義に固執して譲らない人を時々見かけるのですが、このような作り方をしてしまうと水漏れして庭全体がグチャグチャの湿地帯になってしまったり、ドブのような臭くて汚い水質になってしまったり等々、トラブルに悩まされてビオトープを楽しむどころではないという残念なケースになることがほとんどです。

そもそもビオトープ本来の意味である自然環境の復元や生態系の保護は、自然環境の中で行うものであって、個人のお庭やベランダなどの人工環境の中で行えるものではありません。なぜなら、自然環境の中には美しい草花、蝶、小鳥のように人に歓迎される生物ばかりでなく迷惑な生物も数多く存在します。もしお庭で自然環境の復元や生態系保護を行うというのであれば、カラス、蚊、蛾、蜘蛛、蜂など、時として人に害を及ぼす生物や、見苦しい雑草なども全て受け入れなければなりません。人間の都合で一部の生物だけ排除するということは、ビオトープ本来の意味である「自然環境保護」という意味に矛盾していることになります。つまり、人が快適に過ごせる環境の中で自然環境の復元や生態系の保護を行うことは非常に無理があるのです。

「ガーデニング」分野の様々なビオトープ

ビオトープには、自然環境保護を表す意味と、ガーデニング用語で水辺を表す2つの意味があることがご理解いただけましたでしょうか?近年都市部においては地上の庭に限らず、屋上やベランダなどの人工環境にビオトープを作り楽しむケースが多くなりましたので、これらを2つの意味を混同してしまわないように注意し、人工環境に適合した作り方と管理を行わなければ、人が観賞して楽しむという目的からかけ離れたものになってしまいます。自然生物ファーストの「自然環境保護」分野と、人間ファーストの「ガーデニング」分野では、ビオトープの作り方や概念が全く異なるということを忘れないでください。

ガーデニング分野のビオトープには難しい定義などはありません。当然のことですが、自分のお庭にどんな植物を植えるのか、どんな魚を飼うのかは作る人の自由なのです。(※但し、もし自分のお庭で外来種等の植物や魚を育てた場合、増えすぎたからといって自然環境に放流したりすることは絶対にやってはいけません。) 学校や幼稚園などにおいて、自然の生態系を学習する目的でビオトープを作る場合を除き、ビオトープ本来の定義にとらわれる必要はまったくありません。

大切なのは「人が心地よく楽しめる範囲で上手に自然と共存する事」であることを忘れずにビオトープ作りをスタートしましょう。

ビオトープの歴史は、ドイツのある生物学者が「生物の生息空間」のことを、ギリシャ語の「bio=生命」と「topos=場所」を組み合わせた合成語「biotop」と名付け、1976年にドイツで自然環境の復元を盛り込んだ自然保護法が制定されたことから、政府や企業、市民が協力して森林や池などを整備するというビオトープ作り活動が広がったそうです。(ドイツでのビオトープとはビオトープの意味のページで説明した「生物の生息空間」です)

参考:ドイツのビオトープについて詳しく書かれているサイト⇒ドイツ環境情報のページ

日本では1970年代頃から、小・中学校の校庭に自然風の水辺を作り、そこに生息する生態系を観察するといった環境教育の場としてビオトープ作りが流行しはじめ、今では「水と緑による癒しの空間」として一般家庭のお庭にビオトープを作り親しまれるケースの方が圧倒的に多くなりました。このように、ドイツのビオトープが自然の復元を目的として始まったのに対し、日本におけるビオトープは環境教育の場、癒しの環境作りというような目的が先行したようです。日本でビオトープと言えば「自然風の水辺」と一般的に認知されるようになったのはこのような経緯が理由なのかもしれません。

さて、ビオトープという言葉がドイツから伝わるまで、日本にビオトープの作り方に関する情報はありませんでした。そこでビオトープ先進国であるドイツから資材を輸入し見様見真似で作り始めた、というのが日本におけるビオトープ作りの始まりのようです。つまり、ビオトープ作りで失敗しないためのポイントと注意点のページでトラブルの原因として説明している「防水シートを使用して水を溜めるだけ」という作り方はドイツから伝わったようなのです。「ビオトープの先進国であるドイツから輸入されたものだから大丈夫だろう」と信頼して、日本でもこの作り方を真似してビオトープを作られた方が多くいるようですが、水漏れや水質汚濁等のトラブルが多発しているのが現実です。ここで疑問に思うのは、本当にこのような作り方をしてドイツでは問題は起きないのか?ということです。

その答えは、ドイツと日本とでの環境(気候風土、水質、土質、生態系の種類)の違いにあります。ドイツは緯度で見ると北海道と同じかやや北にあたるため、気候は北海道に似ているようです。冬が長く、日照時間も短いようで、日本のように夏場は35℃を超える日が続くということもありません。又、ドイツの水はミネラル(カルシウムやマグネシウム)が豊富に含まれた硬水で、水道管、湯沸かし器、コーヒーメーカーなどはミネラル分が付着して真っ白になってしまい、お風呂のシャワーもミネラル分で詰まってしまうそうです。(

これだけ温度や日照時間に差があり、ミネラル分を豊富に含んだ水を使用しているのであれば、ドイツのビオトープでは水を循環させたり水質浄化をしなくても常に澄んだ水質を保てるのでしょう。又、豊富なミネラル分を含んだ水や土質は、カルシウムによる石灰化で水の浸透を防ぎ、シートのような簡易な防水でも水漏れのトラブルは発生しないのかもしれません。

このように、日本の環境と全く異なるドイツのビオトープと同じ作り方を真似しても上手くいかないのは当然のことなのです。日本でビオトープを作るのであれば、日本の環境に適合した作り方(設計・資材の選択・維持管理)をする必要があるのです。

ドイツ ビオトープ.jpg

       ドイツと日本は風土が異るため、ビオトープの作り方も異なる

アクアフォレストが作るビオトープのテーマは「水と緑で人を癒す空間」です。もし自分のお庭にビオトープを作るのであれば、画像のように透明で清らかなビオトープをイメージされるのではないでしょうか。

ビオトープ 

  ビオトープユニット®を使用して作られた透明で清らかなビオトープ  

仮に、濁って臭い水、ぼうぼうの雑草、蚊がブンブン飛び回るようなビオトープがあったとしたら、そこは人が癒される空間にはならないでしょう。ビオトープは美しくなければ作る意味がないのです。

ビオトープ 

           これがビオトープ???     

しかし、美しいビオトープを人工的に作ろうとすると諸々の条件をクリアしなければなりません。DIYしようといろいろと材料を買い込んでみたものの思ったより手間がかかりうまく作れなかった、なんとか作ってみたもののトラブル続き、という話を良く聞きます。以下にアクアフォレストに寄せられるトラブル相談ベスト3を挙げてみました。 

1位・・・水が漏れて水道代が莫大になってしまった。

2位・・・アオコで水が濁ってしまい生臭い。

3位・・・ボウフラが沸いて蚊が大量発生してしまった。 

これらのトラブルが発生するビオトープに共通するのは、防水シートや遮水シートと言われるものを敷いた上に単に水を溜めて魚や植物を入れただけという簡易な方法で作られたものです。これらは「水たまり」や「泥沼」の状態であって、ビオトープといえるものではありません。学術的に見れば、ボウフラや蚊であっても生態系が存在すればビオトープなのかもしれませんが、不衛生で人にストレスを与えるような環境は、人が鑑賞して楽しむことを目的としたガーデニング分野のビオトープとはいえません。「ビオトープには自然の浄化作用があるから水を溜めて放っておけば大丈夫。濾過や水の循環は必要ない」というのは、巨大な大地で濾過され湧き出た水と、バランスの取れた生態系によって構成されている自然界のビオトープのお話。人工的に防水して大地と遮断された貯水槽を作り、そこに貯めた水を繰り返し使用しなければならないというお庭のビオトープとは根本的に構造が異なりますので、これらの理屈は通用しません。自然界のビオトープとガーデニング分野のビオトープでは目的や仕組みが全く異なるということを忘れないでください。どんな作り方をしても完成した直後はそこそこきれいな状態を保ちますが、そのまま放っておけば、ほとんどの場合数ヶ月後には無残な姿になってしまいます。

参考までに、アクアフォレストのビオトープ作りで特に大切にしている3つのポイントをご紹介します。 


 防水 

劣化やひび割れなどの心配がなく、半永久的な防水性、耐久性を備えていること。

 水質維持

アオコやボウフラの発生が無く、常に清らかな水質を維持できる水質浄化機能を備えていること。

 デザイン

見る人が癒される美しいデザインを備えていること。

更に、近年では屋上やベランダにビオトープを作るケースが多くなりましたが、その際は上記に加え「軽量性」が重要になります。ベランダや屋上の耐積載荷重は180kg/㎡程度ですが、あまり高重量な資材を使用したり、水深を深くし過ぎたりすると(水深20cmで200kg/㎡になります)積載荷重制限をオーバーしてしまい、大変危険ですので注意が必要です。

ビオトープ ベランダ

ビオトープユニット®を使用してベランダに作られたビオトープ(滝と小川)  

いつも清らかで美しいビオトープを楽しむには日頃のメンテナンスが必要なのは勿論ですが、最も大切なのは、ビオトープを観賞して楽しむという目的に必要なポイント(防水、水質維持、美しいデザイン等)をしっかりと押さえた設計がなされていることです。ビオトープは完成してから一度水を溜めてしまうと改修が困難ですし、後になって改修してもトラブルを解決しきれない場合もあります。ビオトープ作りを始める前に「人が観賞して楽しむ」という本来の目的に見合った適切な設計からスタートすることが失敗しないビオトープ作りの第一歩です。 

<インターネットの情報>

インターネット上にはビオトープの作り方に関する様々な情報が溢れています。Q&A形式の掲示板等を見ると、明らかに専門家が書いたものではないなと思われる回答が多く見られます。掲示板の回答者は匿名ですのでどれだけの経験や技術を持っているのかも分かりません。専門家から見れば「これはマズイぞ!?」と思うような情報も多く含まれています。参考:Yahoo!知恵袋(ビオトープの作り方)

このような情報を参考にしてビオトープを作ってみたところ上手くいかなかったという人がほとんどです。インターネットの情報を参考にするのであれば、その情報源がビオトープ作りの専門家のものであるかということを確認してからにしてください。出所のわからない情報は参考にしない方が安全です。

ここでいうビオトープ作りの専門家というのは、○○大学の教授、××評論家という人達のことではありません。日常的に実際にビオトープを作っている「施工のプロ」のことです。どんな分野でも同じですが、実際に手を汚し経験を積まなければわからないことがたくさんあります。机上の勉強や情報の寄せ集めだけではビオトープ作りは上手くいきません。

ビオトープ 専門
所沢ビオトープ縮小.jpg

正しい情報は「施工のプロ」から

書籍の情報> 

インターネットと比べ、ピオトープ関連の書籍は非常に少ないのが現状です。ベストセラーにもなったあるビオトープ関連の書籍を見ると、植物や生物の事に関しては大変詳しい情報が載っているのですが、防水に関しては「ブルーシートを敷く」という情報しか載っていませんでした。(防水シートを使用した方法のページに詳しく書きましたが、ブルーシートではビオトープの防水はできません)

この本を読んだある小学校の子供たちは、「こんなに安くて簡単にビオトープが作れるんだ」と、ブルーシートを購入してビオトープを作ったそうですが、すぐに水漏れしてしまい、水を貯めることもできずに撤去することになったそうです。

決して著者を非難しているのではありませんので誤解しないで欲しいのですが、著者の経歴を見るとテレビで講演されたりと高名な方のようです。植物や生物に事に関しては素晴らしい情報を発信されているのですが、実際にビオトープ作りを行っている「施工のプロ」ではないようです。そのため、防水の事に関しては知識が不十分だったのでしょう。書籍を参考にするのであれば、著者の経歴から植物や生物の専門家なのか、施工の専門家なのかを見極め、その専門分野の情報だけを参考にした方が間違いありません。 

最近のホームセンターや園芸店には、思わず手にしたくなるような美しい草花が売られていますが、良く見るとこれらの70%以上は外来種です。一般の人が在来種を購入しようとしても入手しにくいのが現状です。

外来種

    園芸店で売られている美しい草花。その多くは外来種

下の画像は国営ひたち海浜公園にあるネモフィラの丘に訪れた時のものです。この公園は国営なのですが、北アメリカ原産の外来種ネモフィラが450万本も植えられています。ネモフィラが咲く季節には多くの人が観光に訪れ、時には結婚式を挙げるなどして人々の憩の場所として親しまれています。園内を散策すると、蝶々が舞い、心地よい小鳥のさえずりが聞こえてきます。広義でいえばこの公園もビオトープと言えるのでしょう。このような美しい風景を見て「外来種を植えてはいけない」と文句を言う人は誰もいません。 

ネモフィラの丘.JPG

         美しく咲き誇るネモフィラの大群

このように、国営公園であっても外来種の植物を上手に活用し、美しい環境作りと憩いの場の創出に成功しています。しかしながら、「ビオトープに植える植物は在来種でなければならない」というような議論を今でも耳にすることがあります。「自然環境保護」と「ガーデニング」でのビオトープの違いのページで詳しく説明しましたが、自然環境の保護や復元を目的としたビオトープとは異なり、人の憩いや鑑賞を目的とした公園やお庭などのプライベート空間に作るビオトープに何を植えるかは作る人の自由ですので、このような議論は全くのナンセンスです。

時々お客様から「ビオトープにはどんなお花を植えたら良いのでしょうか?」と聞かれることがありますが、アクアフォレストでは「自分の好きなお花を植えるのが一番良いですよ」と答えています。冒頭で説明しましたとおり、外来種と比べ在来種の植物は種類が少ないのが現状です。無理をして在来種のみを植えてみたところ、華やかさに欠け、庭全体が陰気な雰囲気になってしまうこともあります。最近ではモダンなデザインの建物やお庭が主流となってきましたので、その雰囲気に合うように外来種を上手に取り入れてあげることも美しいビオトープを作るコツです。(勿論、「自分のお庭で自然環境保護活動を行いたい」という人にこのようなアドバイスは致しませんが、そのような人とこれまでお会いしたことはありません)

注意:学校ビオトープを成功させるためのポイントのページで説明した通り、自然環境の学習を目的としたビオトープには基本的に外来種は植えません。

参考:環境省のホームページ     

学校にビオトープを作る目的は、自然環境の学習、コミュニティスペース作り、校庭の美化等、いろいろあるようですが、一般的には「自然の美しさや生態系の尊さを学ぶ情操教育の場」として利用されているケースが多いようです。

これまでこのサイトでは、「ガーデニング分野でのビオトープにおいてはどんな植物を植えるか、どんな魚を入れるかは作る人の自由」と紹介してきましたが、教育目的のビオトープとなると少し意味合いが違ってきます。子供たちの安全確保が最優先である学校や幼稚園におけるビオトープ作りの基本は、人間ファーストのガーデニング分野ということになりますが、 学校では日本古来の自然環境を学ぶことになりますので、その場合は植物、魚、デザインに至るまで、日本に在来するものに限定されます。

それでは学校における理想的なビオトープ作りとはどのようなものなのでしょうか?よくある学校ビオトープ作りのパターンを大きく三つに分けて説明します。

①児童参加型

児童が主体となり、教員が指導しながら施工(穴掘り、防水、植栽)を全て行う。

②専門家にお任せ型

ビオトープの施工は専門家が行い、完成後の維持管理は児童が行う。

③専門家と学校の連携型

専門家指導の下、学校の教員、PTA、父兄が連携して施工を行い、維持管理は児童が行う。

このように比べて見ると、①児童参加型が一番望ましいように思えるのですが、残念ながらこのパターンで上手くいったケースを見たことがありません。なぜなら、児童参加型では単に穴を掘って水を貯めた、という簡易な作り方しかでないからです。ビオトープ先進国ドイツとの違いのページで説明したとおり、ドイツと日本では風土が異なりますのでこのような作り方をしてもうまくいきません。

日本でビオトープ作る場合には防水と水質浄化の技術が必須となるのですが、この重要な部分を念頭に置かずに子供達にビオトープを作らせた結果、上手くいかずに仕方なく撤去したという話を良く聞きますが、これでは本末転倒、お金と時間を無駄にし、子供達に悲しい思いをさせるだけです。専門家から言わせていただければ、ビオトープ作りには専門家にしか分からないノウハウがありますので、子供達だけでビオトープを作らせることは不可能です。

お勧めなのは、②専門家にお任せ型③専門家と学校の連携型のどちらかです。防水や水質浄化等の重要な構造部分の施工は専門家と学校が担当し、草花の植栽、魚の放流、ビオトープの管理等は児童が担当する、という具合に、専門家や大人にしかできないこと、子供にもできることを良く理解したうえで、それぞれの役割を明確に分担することです。これが学校ビオトープ作りを成功させるためのポイントなのです。

ここである小学校でのビオトープ作り成功事例をご紹介します。

この小学校には元々ビオトープがあったのですが、10年以上前に作られたもののようで、現在は防水シートに穴が空き水も貯まらず、木製の橋は朽ち果て、なんとも無残な姿となっていました。そこで子供たちのためになんとか再生できないかということで、PTAの皆様が主体となって再生計画を考えました。

ビオトープ 学校
学校 ビオトープ

木製の橋は朽ち果て、防水シートには穴が空き水が貯まらない状態

PTAの会長は、再生するのであれば同じような失敗を繰り返さないようにと考え、インターネットで情報収集を開始しました。その中で当社のこのページが目に留まり、隅から隅まで熟読されたそうです。その結果ビオトープ作りの難しさを痛感され、当社にご相談のご連絡をいただきました。ヒアリングを行うため学校に訪問し、元々あったビオトープの状態を拝見したことろ、十年以上前に作られたものであったため防水や水質浄化の技術面は不十分でしたが、全体のデザインは素晴らしく、できればこのままの形で再生できるのが一番良いと考えました。しかし、この学校のビオトープの規模は非常に大きく、工事の全てを当社で請け負うには予算が足りません。そこで、当社は現場の形状に合わせたビオトープユニット(成型池、成形小川、成形滝)のみを製作し、ユニットの設置と植栽作業は当社指導の下で学校側で行うという「専門家と学校の連携型」を提案し、ビオトープの再生を行うことにしました。

ビオトープ 作り方 学校
学校 ビオトープ
ビオトープ 学校

専門家と学校との連携によるビオトープ作り

 

そして、二月の寒い時期にも関わらず、校長、教頭、教員、PTA、父兄の皆様によるビオトープ再生隊が集結し、延べわずか5日(延べ作業人数75人)で素晴らしいビオトープが完成しました。

限られた予算の中でこのような素晴らしいビオトープを完成させることができたのは、PTAの会長が事前にしっかりと情報収集をしたことによりビオトープ作りの難しさを良く理解され、防水や水質浄化等の専門的な分野は当社にお任せし、学校側で出来ることは自分たちで行う、というように明確な役割分担を行ったからに他なりません。

ビオトープ 小学校
学校 ビオトープ 池

せっかくビオトープを作ったのに半年後にはドブのように無残な姿になってしまった、という話を良く聞きます。インターネット上にはビオトープの作り方に関する様々な情報があふれていますが、その中には誤った情報や迷信が多くあり、これらを鵜呑みにして手探りで作ってしまったのが原因というケースがほとんどです。ビオトープは一度作って水を溜めてしまうと後で改修するのは困難です。せっかくお金をかけて作ったのに結局取り壊しすることになってしまった、というような悲しい思いをしないために、ビオトープ作り専門のアクアフォレストがこれまでの経験から培ったビオトープ作りでやってはいけない三原則をご紹介します。

<目次> 

土を入れる

溜池状態にする

メンテナンスをしない

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