医療現場から見た屋上森林セラピーガーデンの効果 (医師 松永慶子 様)

病院・老健施設の医師や療法士が患者様の心の不調に気づいた時、室内ではなく、癒しの環境の下で治療を行いたいと思いながらもできない事が殆どでした。
エルダリーガーデン・松永病院では10余年の間、水中での理学療法・リハビリテーションを施行していますが、身近な施設内のプールで、必要なときに、何時でも療法を施行できることに価値を感じてきました。同様に、森林セラピーを必要とするとき、施設に森林があるというフィールド効果はどれほど大きなものでしょうか。
エルダリーガーデンのように、老健施設のご利用者に介護は欠かせません。認知症の治療に森林が必要な場合でも、介護の無い森林に行くことはできませんでした。また学校などでも心の弱った子供に寄り添うセラピストと癒しの環境が必要ですが、セラピストの居ない郊外の森林で治療はできません。それが身近な病院等の施設内での森林セラピーが可能になりました。将来は、学校や企業の施設においても、クライアントが必要とするときに何時でもセラピストが寄り添える、屋上での森林セラピーが可能になるかもしれません。
病院の屋上に小さな森ができました
老人福祉施設エルダリーガーデンは車椅子を利用するお年寄りが多く入居している施設で、約121㎡の屋上スペースがありました。この身近な屋上スペースを利用し、外出が困難な入居者に森林セラピーやリハビリテーションの場を提供するのが「屋上森林セラピーガーデン」の狙いです。
既存建物であるため60kg/㎡という厳しい荷重制限がありましたが、ビオトープユニットを使用して庭全体をコンケイブ(凹形)なフォルムに造形し、森林の奥行きを感じさせるナチュラルな滝や清流を作りました。又、癒し効果の基であるフィトンチッドを多く発散する樹木を植栽し、足元にはハーブや香りの良い花をつける植物を配置するなどしてアロマセラピー効果も備えました。更に車椅子でも散策できるように傾斜を緩やかに作り、屋外診療ができる東屋を作るなどしてユニバーサルなデザインを施しました。
森林セラピーガーデンが完成後は今まで部屋にこもりがちだった入居者の皆様が積極的に屋上に訪れるようになり、自然との触れ合いを楽しまれているそうです。また施設に勤務する職員の方々が休息の場としても利用されているとのことでした。
※施工から半年後に森林セラピーの研究機関が医学的見地から癒し効果の実証実験を行い、自然の森林と同様な癒し効果が得られることを確認しました。
デザイン検討用縮小モデル

施工前の屋上